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AI(人口知能)に奪われる仕事と奪われにくい仕事【会社員編】

この記事を読めば分かること

●AIに仕事を奪われる可能性が高い部署

  • 第1位:経理部
  • 第2位:人事部
  • 第3位:営業部

●AIに仕事を奪われる可能性が低い部署

  • 第1位:研究開発・事業企画
  • 第2位:広報・IR部
  • 第3位:総務部

以前の投稿でAI(人工知能)で未来がどう変わるのか、について触れました。

AI(人口知能)で未来はどう変わるのか。2030年までの予測を考察

ディープラーニングの躍進によって、AI(人工知能)の技術はますます進歩していくと考えられています。

そんななかよく聞かれるのが「人間の仕事がAIに奪われるのではないか?」という懸念です。たしかに、AIが進歩して人間よりも賢く正確に仕事ができるのであれば、人がしている仕事が奪われる可能性があります。

特に、ホワイトカラーとしてオフィスで働いている人の仕事は、AIに奪われる可能性が高い仕事です。今回は、AIに仕事を奪われる部署と奪われにくい部署のトップ3をそれぞれご紹介します。

AI(人口知能)技術進化の前提条件

2030年までのAI進歩のロードマップ

AIに奪われる仕事を見る前に、2030年までにAI技術がどのように進化していくか。また、その過程でAIはどのようなことができるようになるのか。そのロードマップを見てみましょう。(参考:人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)(松尾 豊 著))

step
1
行動とプランニング、行動に基づく抽象化(2020年~)

・AI自身が自律的な行動計画をたてられるようになる

・AI自身の行動で収集するデータにより、環境認識の精度があがる

活用例:自動運転、農業の自動化、ドローン物流、家事・介護 など

step
2
言語理解(2025年~)

・獲得したさまざまな概念と言語を紐づけ

活用例:翻訳、海外向けECサイト

step
3
大規模な知識理解(2030年頃)

・Step2の延長にある大規模な知識理解

活用例:ホワイトカラーの業務全般、教育、秘書 など

これらのロードマップから会社員の仕事に関して、2030年までにAIは下記のようなことが可能になると仮定します。

AIができるようになること

  • 簡単な電話応対・メール対応
  • 文字・画像の認識
  • ルーティンな事務作業・資料作成
  • 異常検知

"ドラえもん"は完成しえない

上記のロードマップを見てもらうと分かるとおり、2030年までの近い将来には、自律して考え、行動することができる"ドラえもん"のようなAIは、まだまだ完成しえないことが分かります。

したがって、少なくとも2030年までにAIに人のほとんどの仕事が奪われる、といったことは起こりえないでしょう。

奪われる仕事にも人による管理・チェックは必要

AIに仕事を奪われるといっても、当面の間は、手を動かすのがAIに変わるだけということになるでしょう。

少なくとも2030年までは、AIはルーティンな作業や仕事を行うことはできても、イレギュラー対応や仕事の全体感を把握した上での高度な判断はできそうにありません。

したがって、AIに仕事を奪われるといっても、それらの仕事をチェックしたり、AIの動作を調整したり、イレギュラー対応を判断する"人間の管理者"は当面必要になるでしょう。

AIによって奪われる仕事~会社員編~

それでは、AIに奪われる仕事はどのようなものがあるでしょうか。会社員の仕事に絞って、一般的な企業にある部署ごとに、AIに仕事を奪われる可能性が高い順で見ていきましょう。

第1位:経理部

会社のなかで最もAIに仕事を奪われる可能性が高い部署は、経理部の仕事でしょう。下記図をご覧ください。

経理部の仕事の多くは、業務システムや社内資料への数値の入力・調整となっていることが多いでしょう。これらの業務は、AIが最も得意とする業務です。

たとえば、支払業務を例とします。現在の支払業務は、人が紙または電子で提出された資料を人がチェックし、社内システムや銀行システムに必要事項を入力して、支払を行います。

しかし今後は、これらの作業はAIが行った方が効率的になるでしょう。チェックなどの「異常検知」や、Aシステム→Bシステムへの数値や文字の転記などは、AIの方が正確かつスピーディーだからです。

決算資料の作成もAIでますます自動化されるでしょう。社内システムから決算ルールに則った数値を自動で集計し、決算資料作成ツールへ転記し、体裁まで整えて出力する。人が行うことは、決算発表や監督官庁へ提出前の資料を念のため確認する、というところでしょうか。

資金・資産運用も、AIが行った方が効率的です。国債・株式・為替・投資信託などあらゆる金融資産の情報をインプットしたうえで、もっともリスクが低くかつ高収益なポートフォリオをAIが提案するでしょう。その売買フローも含めて、AIが行うことも可能となるでしょう。

こうなると、人間が行った方がいい仕事を探す方が大変です。

1つ、公募増資など社債発行などの資金調達は引き続き人が行うでしょう。資金調達は、将来の投資や経営方針に従って行うものです。出資者へビジョンの説明が必要となることから、AIが取って代わるのは難しいでしょう。そのほか、AIの調整や従業員向けの案内や説明は、引き続き人が行うでしょう。

第2位:人事部

次に仕事を奪われる可能性が高いのは人事部です。

人事部は、多岐にわたる業務を行っていますが、このうち給与計算などの数字とかかわりが深い仕事はAIにとって代わるでしょう。

給与計算は、会社のルールに従って、勤怠状況・所得税・住民税・社会保険などのさまざまな要素をもとに、計算されます。考慮する要素が多岐にわたるため、会社によっては多くの工数をかけてこれらを処理しているでしょう。

しかし、AIが進歩すると、これらの要素を全て加味して、自動で給与を計算するシステムがますます出てくるでしょう。今は紙で処理しているような資料も今後は電子化が進んでいきます。紙でしか出せない書類も、AIが文字や画像を認識する能力はますます高くなるため、人がわざわざ手入力で転記する必要がなくなります。

給与計算は、正確性と速さが求められる仕事です。これらはAIが得意とするところなので、人が行う領域は減っていくでしょう。

人事部で引き続き残る仕事は、人材教育や採用活動など"人"に直接かかわる仕事です。たとえば、採用活動について見てみましょう。

採用活動では、履歴書やES、面接で応募者を評価します。AIは、ESや履歴書に記載された内容(学歴、資格、特技)などを理解することはできます。しかし、面接などにおいて、応募者の話し方や清潔感、誠実さなどの人間的な魅力も評価のポイントに入ってくるわけです。AIは、そういった人間的な部分を理解し評価することは、当面の間はできないでしょう。

同様に、人材教育や人事評価なども同様です。適切な教育や評価を行うためには、そういった人間的な面を無視することはできません。

今後、給与計算に割いていた工数は、より人間的な側面を重視した仕事にシフトしていくでしょう。

第3位:営業部

AIに仕事を奪われる部署第3位は営業部です。

営業がAIに仕事を奪われる、というのは意外に感じるかもしれません。お客さまと直接かかわる仕事だからです。

営業の全ての仕事がAIに奪われるわけではありません。AIに奪われるのは主に、受発注業務、ルート営業、コールセンター業務などの定型的な仕事です。

AIは、2030年までには相当程度、言語を理解する能力が高くなることが見込まれます。お客さまからの電話での注文やメール・注文書などの内容を理解し、必要なプロセスへ流すことが可能となるでしょう。

ルート営業も、AIに取って代わられる可能性があります。取引実績がある顧客先で、製品の調子はどうか、在庫はまだあるかという定期的な確認であれば、AIでも代替できます。そもそも、今後は在宅勤務やシェアオフィスの利用など自由な働き方が進むなかで、会社へ訪問して営業する、というスタイル自体が減ってくるでしょう。

コールセンター業務も同様です。定型的なサポートや手続きなどの案内であれば、AIが代替することは十分に可能です。

営業のなかで引き続き行う人が行う仕事は、企画・提案型の営業です。まさに顧客に価値を提案するという、まさに営業の核となる部分は当分の間はAIには代替されません。

また、トラブルやクレーム対応などもAIが処理することは難しいでしょう。高度な判断が必要ということもありますが、クレーム対応は人の感情的な側面も考慮する必要があります。こういった人間的な部分を、AIが考慮することは難しいでしょう。

その他、AIにとって代わる可能性がある部署

4位以下は、下記のとおりです。(順不同)

  • 法務部:契約書チェックはAIの異常検知・言語理解能力により、代替可能。ただし、コンプライアンスの業務は社員教育的な側面が強いため、引き続き人が行う可能性が高い。
  • 秘書室:役員のスケジュール管理や調整は、AIが十分に代替可能。電話応対や来客対応なども、電話や受付システムのAIで代替できる。ただし、秘書は「あえて人が行うこと」に付加価値を見出せる可能性がある。
  • 内部監査室:内部統制で、社員がルールに則って業務をしているかの確認は、AIの異常検知である程度代替できる。

AIに仕事を奪われにくい部署

では反対に、AIに仕事を奪われにくい部署はどこなのでしょうか?

第1位:研究開発・事業企画

研究開発や事業企画の仕事は最もAIに代替されにくい部署でしょう。

新たな製品や事業を生み出すには、さまざまな分野の知識を組み合わせる高度な思考が必要となります。また、そもそも新製品・新事業とは人の「こういうものがあったらいいな」という欲求から生まれるものです。

そういった複雑な思考をAIが行うことができるようになるのは、相当先の未来となるでしょう。

第2位:広報部・IR部

広報やIRもAIに代替される可能性が低い部署です。

どのように発信をしたら人の心に刺さるか。どんなメッセージが印象に残るか。そういった感覚的なことはAIでは代替できません。また、IRは将来ビジョンを語る業務です。そのビジョンをどう描き、どう伝えるかを考えることはAIには当面の間できないでしょう。

第3位:総務部

意外に思われるかもしれませんが、総務部はAIに仕事を奪われる可能性が低い部署の1つです。

総務部は、会社によって役割が違います。もちろん、総務部で人事や経理などの定型業務を抱えている場合は、それらの業務はAIに取って代わるでしょう。

しかし、近年の総務(特に大手企業の総務)は、どの部門にも属さないイレギュラーな仕事を任される「何でも屋」としての総務が増えてきています。最近ですと、新型コロナウイルスの対応を総務が主導で行った企業も多いのではないでしょうか。

そういった、突発的な業務を対応することはAIにはできません。総務部のゼネラリストとしての役割はAIには代替できないのです。

AI(人工知能)に関する本(参考書籍)

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)(松尾 豊 著)

まとめ

AIに奪われる仕事について見てきました。

当面の間は万能なAIが誕生することはないものの、人が行っている定型的な仕事はどんどんAIに代替されていきます。

そうなったとき、人が行う仕事の価値とは何なのでしょうか。

今後の自分のキャリアについて考えるなかで、ぜひ一度、「人がやるべき価値のある仕事」について考えてみてはいかがでしょうか。

 

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